LIME研究会

MGDの診断・治療

最新のMGD治療 : 点眼治療

MGDの推奨治療アルゴリズム

TFOS MGD report (IOVS 2011)より
Stage臨床所見治療
1 自覚症状 なし
MGD所見 軽度
眼表面異常なし
患者教育
温あん法
 +リッドハイジーン
2 自覚症状 軽度
MGD所見 軽度
眼表面異常 なしor軽度
上記に加えて
ω-3脂肪酸摂取
圧出・マッサージ
人工涙液・点眼
アジスロマイシン点眼
3 自覚症状 中等度
MGD所見 中等度
眼表面異常 中等度
上記に加えて
テトラサイクリン内服
ドライアイに対する抗炎症治療
4 自覚症状 強い
MGD所見 重症
眼表面異常 高度
上記に加えて
ドライアイに対する抗炎症治療

MGDと抗菌薬(テトラサイクリン系、マクロライド系)

リパーゼ阻害作用(basic science level I and Ⅱ)

リパーゼ → 遊離脂肪酸産生
(涙液層の不安定化、炎症促進、ROS産生、好中球遊走化)

抗炎症作用

テトラサイクリン系
炎症性サイトカイン・ケモカイン(IL-1、IL-6、TNF-α)産生抑制、抗酸化作用、MMP産生抑制
マクロライド系
IL-8, IL-6, TNFαの産生抑制、好中球遊走抑制
MMP9産生抑制、TGF-β1発現増加

抗菌ではなく抗炎症をねらって処方

アジスロマイシンについて

アジスロマイシンの特徴

長時間体内に留まる
これは15員環に窒素原子が入っているという構造に由来し、血中濃度より10〜100倍の組織、細胞内濃度を得ることができるため半減期が68.1時間(500 ㎎全身投与時)ときわめて長い。
マクロライド系の抗菌薬である
  • 15員環マクロライド系抗菌薬
  • 分子量 749g/mol

アジスロマイシンの薬理効果

  • 静菌的作用
  • グラム陽性菌、グラム陰性菌に幅広く効果を示す
  • 組織内の滞留時間が長い
  • 抗菌作用以外の効果にも期待できる

抗菌スペクトル

抗菌スペクトル

抗菌スペクトル

前部眼瞼炎
ブドウ球菌・殺菌・眼瞼への移行
→フルオロキノロン(高濃度製剤)・ベストロン
マイボーム腺炎
C. acnes/ブドウ球菌・殺菌・眼瞼への移行
→フルオロキノロン(高濃度製剤) +マクロライド
分泌減少・増加型MGD
C. acnes・静菌的も可・抗炎症・眼瞼への移行
マクロライド(アジスロマイシン点眼)

アジマイシン点眼(抗菌・抗炎症作用)によるMGD治療

アジマイシン点眼液1%マクロライド系抗菌薬となるアジスロマイシン点眼液は、2007年に米国で結膜炎点眼治療薬として承認を得て以降、MGDへの有効性について常に注目されてきました。

日本では2019年に製造販売承認がなされ、2019年9月より「アジマイシン点眼液1%」として処方が可能になりました。

アジスロマイシン点眼の利点としてC.acnesに高い感受性があること、抗炎症作用があることが上げられます。
静菌的ではありますが、MGD治療では抗炎症作用を重視しているため、問題ありません。

マクロライド系であるアジスロマイシンが直接、マイボーム腺の上皮細胞に作用し、脂の分泌を促進することが証明されています。

Luchs J.Adv Ther. 2008 / Opitz DL, Tyler KF. Clin Exp Optom. 2011
Foulks GN, et al. Cornea. 2010 / Liu Y, Ding J.Invest Ophthalmol Vis Sci. 2014
Zhang, et al. JAMA Ophthalmol. 2015 / Zandian, et al. Int J Ophthalmol. 2016
Yildiz, et al. J Ocul Pharmacol Ther. 2018 他多数

AZM点眼をMGD患者さんに処方するときは「眼瞼炎」の病名をつけてください。

MGDは眼瞼炎の一部なので、適応外処方ではありません。
詳細は「眼瞼炎」のページをご覧ください。

点眼後の眼瞼中のアジスロマイシン濃度

点眼後の眼瞼中のアジスロマイシン濃度

アジマイシン点眼のMGD治療メカニズム

アジマイシン点眼のMGD治療メカニズム

アジマイシン点眼液注意点

点眼方法の注意点
  • 温罨法、リッドハイジーンとAZMは最初からセットで使うと効果的
  • AZMは自宅でも冷蔵庫に冷やしておく
    (点眼1滴をきちんと実感するため)
  • 点眼ボトルを真下に向けて垂直に
  • 数回振る動作は省略
    (点眼ボトルのネック周辺に溜まるとどろっとたくさん出てしまう)
点眼方法のコツ
点眼液がどろっとしているので、上手に1滴点眼するのは案外難しいです。
動画で「点眼方法のコツ」を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

アジマイシン点眼液の点眼方法のコツ

点眼時注意点
  • 最初の2日間は、信じられないほどしみたり、痛かったり、充血したりします。
  • 3日目からほぼしみなくります。
  • 3日目以降の1日1回の点眼は夜がおすすめです。
    (症状が朝に強く出る人が多いため)
  • 点眼薬のキャップをきっちり閉めてください。

アジマイシン点眼治療患者様の声