LIME研究会

眼瞼炎

眼不定愁訴の症状鑑別フローチャート

医学は先人たちが築きあげてきた膨大な経験科学であることから、いくつかの典型的な症状によりかなり詳しいところまで疾患をしぼることが可能です。もちろん、疾患が発症してからの罹患期間や、今まで受けてきた治療方法による装飾、感じ方の個人差などもあり、これにあてはまらないケースも多々あるかと思いますが、海外の文献による複数の総説、日本の複数の教科書、LIME研究会による疫学調査のデータなどから一般的にコンセンサスを得ているものを抽出し、なるべくシンプルな眼不定愁訴鑑別フローチャート(眼瞼炎とドライアイの鑑別にしぼっています)を作成してみました。

眼不定愁訴の症状による鑑別

まず、フローチャートは「あなたが感じる眼症状は1日のうち、朝が一番ひどい」から始まります。これは下記にその理由を詳しく記載してありますが重要なことなので、要点だけここでも記します。

眼不定愁訴を訴える主な疾患(眼瞼炎、ドライアイ、アレルギー性結膜炎など)の眼症状には日内変動があることが分かっています。疾患の重症度とは関係なく、疾患の種類によって、1日のうち、いつが一番つらいか、を患者さん本人から聞き出すことが大変重要なのです。
例えば伊藤医院ではこんなふうに眼不定愁訴を訴える患者さんにはお聞きしています。

「1日のうち、朝が一番つらいですか?夕方つらいですか?外出から帰宅後ですか?」

朝が一番つらいと眼瞼炎の可能性が最も高く、夕方つらいといわゆるドライアイの可能性が最も高く、外出から帰宅後だとアレルギー性結膜炎である可能性が高いです。逆に1日中症状に変化がない場合、アレルゲンが家のなかにある(ハウスダスト、ダニ、動物など)アレルギー性結膜炎が疑われたりします。

眼症状鑑別診断フローチャートは、「あなたが感じる眼症状は1日のうち、朝が一番ひどい」から始まり、Yesであれば睫毛が汚れているか、Noであれば流涙感があるか、という問いになります。睫毛が汚れている、というのは症状ではないかもしれませんが、前部眼瞼炎の場合、見た目に自分でわかること(充血や眼脂、睫毛の汚れなど)を訴えてくることが多いので採用しております。
流涙感に関しては下記に説明してありますのでぜひご覧下さい。

前部眼瞼炎の典型的な所見、主訴になりうる眼瞼縁の充血は、前部、後部、ドライアイともに見られる所見ですので鑑別フローチャートには入れられませんでした。
ドライアイに最も多い眼精疲労、眼乾燥感、眼掻痒感なども後部眼瞼炎の患者さんでも訴えが多い主訴のひとつですので鑑別フローチャートには入れておりません。

注意:今後、複数の施設で多くの患者さんとのコミュニケーションにおいて、よりよいものに改訂される可能性があります。

(文責・図作成 有田玲子)