LIME研究会

こんにちは。
涙のあぶらプロジェクト 福岡 詩麻です。

2018年11月30日から12月1日に京都コルネアクラブに参加してきました。
年一回、全国の角膜の専門家が京都に集まって学びを深めるための講演会です。
今年は、130名ほどの先生方が参加されました。

私は、トップバッターとして、マイボーム腺と涙のあぶらに関して2017年から2018年にかけて新しく発表された論文についてお話させていただきました。
ジクアホソル点眼、IPL、涙液と涙液油層のイメージングの3つのテーマに関して、私がご紹介した最新の研究論文は下記です。

 

1. ジクアホソル点眼と涙液・涙液油層
ジクアホソル点眼(ジクアス®)は、涙液の水分やムチンを増加させるドライアイ治療薬として使われています。

Fukuoka, Arita. Increase in tear film lipid layer thickness after instillation of 3% diquafosol ophthalmic solution in healthy human eyes. Ocul Surf, 2017; 15: 730-5.
正常眼において、ジクアホソル点眼後60分後まで、涙液油層厚が増加しました。

Amano, Inoue. Effect of topical 3% diquafosol sodium on eyes with dry eye disease and meibomian gland dysfunction. Clin Ophthalmol, 2017; 14: 1677-82.
MGDを伴うドライアイ眼において、3か月間のジクアホソル点眼により、マイバム、マイボーム腺面積、点眼20分後の涙液油層厚が改善しました。

Ikeda, Simsek, Kojima, Higa, Kawashima, Dogru, Shimizu, Tsubota, Shimazaki. The effects of 3% diquafosol sodium eye drop application on meibomian gland and ocular surface alterations in the Cu, Zn-superoxide dismutase-1 (Sod1) knockout mice. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2018; 256: 739-50.
マウスに、2週間ジクアホソル点眼をしたところ、マイボーム腺細胞内の分泌脂質滴の数
涙液安定性、涙液量が改善しました。

これらの研究から、ジクアホソル点眼は、涙液減少型ドライアイだけでなく、MGDに伴う蒸発亢進型ドライアイにも有効である可能性が示されました。

 

2. MGD患者に対するIPL(intense pulsed light)治療
IPLは、可視・広域スペクトルの美容及び皮膚科領域で使用されています。

Arita, Mizoguchi, Fukuoka, Morishige. Multicenter Study of Intense Pulsed Light Therapy for Patients With Refractory Meibomian Gland Dysfunction. Cornea, 2018; 37:1566-71
Arita, Fukuoka, Morishige. Therapeutic efficacy of intense pulsed light in patients with refractory meibomian gland dysfunction. Ocul Surf. 2018 Nov 13; Epub ahead of print.
 IPL治療と鑷子によるマイボーム腺圧出を組み合わせることで、難治性MGDの自覚症状と他覚所見が改善しました。IPLにより、涙液のホメオスタシスが改善されました。

Liu, Rong, Tu, Tang, Song, Toyos, Toyos, Yan. Analysis of Cytokine Levels in Tears and Clinical Correlations After Intense Pulsed Light Treating Meibomian Gland Dysfunction. Am J Ophthalmol. 2017;183:81-90.
 IPL治療と鑷子によるマイボーム腺圧出を組み合わせることで、MGDに伴うドライアイ患者の涙液中の炎症マーカー(IL-17A, IL-6 and PGE2)が減少しました。

このように、IPLは、難治性MGDの治療として期待される治療です。

 

3. 涙液と涙液油層の新しいイメージングシステム
涙液と涙液油層の非侵襲的な測定方法は様々ありますが、通常、涙液全体と涙液油層は別々に評価します。

Bai, Ngo, Gu, Zhang, Nichols. An imaging system integrating optical coherence tomography and interferometry for in vivo measurement of the thickness and dynamics of the tear film. Biomed Eng Online. 2018;17:164.
角膜前涙液層と涙液油層の厚みと動態を同時に撮影できる新しいイメージングシステムについてです。
角膜前涙液層と涙液油層の状態を同時に観察することで、涙液の状態の理解がすすみ、ドライアイやMGD治療評価が新たにできるようになる可能性があります。

 

マイボーム腺と涙のあぶらに関して、国内外でたくさんの研究が進んでいます。
来年も、LIME研究会をどうぞよろしくおねがいいたします。